イタリア料理を通じて日伊親善に尽力したことを評価され、アントニオ・カンチェーミ卿は、イタリア本国より最高爵位であるナイトの称号、イタリア商工会より特別功労賞などを受勲。
1965年
Cavaliere Ordine al Merito della Repubblica Italiana
(カバリエーレ勲章)
1982年
Ufficiale Ordine al Merito della Repubblica Italiana
(イタリア、ベルチーニ大統領訪日後カバリエーレ・ウフィチャーレ勲章)
1989年
Commendatore Ordine al Merito della Repubblica Italiana
(コメンダトーレ勲章)
2002年
イタリア商工会特別功労賞
1916年、アントニオ・カンチェーミはイタリアのシシリア島に生まれた。ローマ近郊にあるサン・バルトロメオ国立調理学校でイタリア料理を基礎から集中的に学び、同期生300人中、最優秀の成績にて同校を卒業。第2次世界大戦が本格化する中、イタリア海軍最高司令長官付きのグランシェフとして大抜擢された。
アントニオが総料理長として乗船したイタリア海軍東洋艦隊旗艦は、アフリカ、東南アジア、中国などを巡航していた。しかし1943年9月イタリアが連合軍に降伏した際、船の機関故障により偶然神戸に停泊することになり、その結果、彼はやむなく異国の地、日本での生活を強いられることになった。
その後、1944年に日本で初めて本格的イタリア料理を神戸の地で在日外国人に提供することになる。
終戦後、イタリアに帰国することを断念した彼は、次第に日本と密接な関係を築いていく。
1947年、ダグラス・マッカーサーの占領下の視察にシェフとして1ヶ月ほど同行。その後東京は麻布の地にイタリア料理店「アントニオ」を開店。麻布という土地柄、もともと大使館も多く、「アントニオ」は瞬く間に外国人はもとより日本人の好評をも博することとなった。イタリア料理といえばマカロニしか知らなかった当時の日本人も、「アントニオ」のラヴィオリやピッツァなど、本場の味に驚嘆したのである。
各界著名人を含め、多くの人々を魅了してやまない「アントニオ」のイタリア料理。肩のこらない、気取らない「アントニオ」のイタリアの味を誰にでも楽しんでもらうこと、それがアントニオ・カンチェーミの願いなのである。